明烏が鳴いている

 あなたの好きな音楽を教えてください。あなたが私に、教えてもいいと思うなら。

 

 ある人がいなくなってしまった。あなたは聞いたこともない名前の人かもしれない。すこししてその体は見つかった。悲しみにしずんだまま一週間が過ぎていて、一日ははやく終わる。そうして気づいたら何かが終わっていた。誰にも言えなかったから、誰も知らない。何かが終わって結果は不調で、ほしいものを買って食べて飲んで、遊んだ。

 悲しみに向き合えないまま受け入れて、今日は誰かが選んだ日になった。選んだのは本人かもしれないし他人かもしれない。だけど確かに、誰かはいなくなった。

 

 あなたには嘆きが映っているだろうか。それは誰の悲痛だろうか、またはそうであっただろうか。今ここで私は酷いことを言っているのかもしれない。だけど、ほんとうに信じている。わかっている。あなたが自分ではない人間の感情に心を傾けることが出来るということ。とてもやさしいあなたを私は見たことがある。

 

 宇宙は初めからずっと同じ重さだ。それが生まれた瞬間から今まで、誰かが選び、誰かが連れ去られ、そうして去る者に比例して星が増えるたび、この地球は軽くなった。軽くなったことで誰かが得したとか、損したとか、人間がそういう話をするようになったのはいつからなのだろう。

 

 あなたは鐘の音を聞いたことがあるだろうか。世界にいくつあるのかは誰も知らない、実際鳴るのかも分からないその音をしかと耳にしたことが。聞いたからと言って、それはあなたに理由を求めはしない。ただあなたのために鳴っている。

 

 誰かがいなくなるということは、ここにいるのにこの地上からいなくなってしまうこと、これ以上を紡いでくれはしないこと。気づいてから、ずっと胸が冷たい。吐く息も吸う空気も、温度を感じるたび嫌になる。

 おだやかに生きるということは人々に祈るだけでは叶わないことなのか。けれどずっと遠い私には祈る以外方法がない。わたしたちはあなたを忘れない。一緒にこれからも生きよう。わたしたちはあなたと生きることができる、その覚悟も準備もここに。

 けれどいつかは受け入れなければならない。わたしたちがあなたに救われたことへの責任を取るときが必ず訪れるだろう。

 

 そのとき、絶対拒んだりしないように生きていかなければ。

 Rest sweet, we always love you and will never leave you alone.