グレープフルーツを割る話

 生きていくのに必要なものはなんだろうか。

 ボールペン、本棚、紙、落書き。バイブルに水分、椅子、音楽。

 甘いものとガムとモンエナはないとやっていられない。

 

 あなたの好きな音楽は何ですか、ええ、私は。

 ゴミだらけの海に死す。

 使わないのに少しずつ厚みを増すアルバム。

 

 はっきりしない空気を吸う、窓から風が吹いてくる。煙がくゆる。

 灰色の群青に浸っている。

 

 夏を待っていた。ラベンダーのアイスクリームを食べるために。

 誰かを待ってるけれど待ち人はいるのですか。

 

 秘密にしている買い物。

 少しさみしいので、ほしいものをこそこそ買う。

 

 グレープフルーツに月とレモンと油。

 

 ほめられたのは、愛しているもののことだった。

 にくい人間に、にくい言葉で、愛しているものを表現されてしまった。

 でも私は単純だから喜んで、それからずっとギターを手放していない。

 

 それでよかった。

 どんな時だってにくしみをくすぶらせていることは、私のためにならないと思うのだ。

 

 にくいよね、ほんとうににくいよね、わたしはあなただからわかったつもりになっている。

 人生を無碍に扱った人間を、許せるわけないのだ。

 

 いつか自分とギターで誰かのためを歌いたいなあ。

 雲の間の月にそれを望んでいる。