君主に宛てて

 私がどれほどあなたを愛していて、どれほど憎んでいるか。

 そんなことは誰もが一生知らなくていい。あなたはもちろん、私だって。

 

 君主に対して頭を下げながらありがたそうに進み出て、偉そうなその首に手をかける。力の限りに絞って、絞って、動かなくなるまで。息の根は絶えてしまったらしい。どうやら。その浅い胸にてのひらをのせるとなるほど確かに生温い血と肉の温度、活動していない肉体だった。

 

 ああ死なないままでこのままで、「もっと早く死ぬべきだのになぜ今まで生きていたのだろう」。死ぬ気がない私がなぜこんなにも死にたいのか。私の一生を貫いたテーマ。あなたではないから私には決定的な瞬間が訪れないし、人生をでっち上げるためにひとつひとつ重ねていったジェンガは杜撰に積まれて、地盤は手抜き工事、欠陥だらけのマンション。もっと生きる気持ちを持って敷き詰めていたらよかったのに。

 

 百群の奥深い一枚に、窈窕な星座を結んで、めかりどきは楽しげで、不眠患者の家に届いたハンモックには意味がない。壁に染みついた私の悲痛に、悶えに、快楽に、踊りを踊って大団円。