後日談
その後にも、わたしは彼のゆめを見た。夢、夢、夢。
あれはほんとうに夢だったのか、そうじゃなかったのか分からない。刃を握って自ら突いたはずの胸は、目覚めた時綺麗だった。
それでも、きれいな胸の奥のほうに冷たいものがわだかまっている。
沢山のゆめの後で、わたしはさみしくなっていた。
汚れた白砂で、遠い波間に俳句を詠みたいような、丁度そんな気持ちだ。
あの墓はどこにあるのだろう。
届かない空の青を吸ってもしょうがないのに、いつまでも宇宙を向いて深呼吸していた幼いわたしとおなじまま、似たようなことをしている。
きっとまだ、彼の墓は作られていないし、ましてや彼の血は巡っている。あの墓地はわたしの地元にあった。奥に見えた山脈は冬の、三国山脈。
ありもしない事実を夢に見てしまって、少し死にたくなった。
2019 7/11に書いた。
来年の、彼の誕生日にでもあげようと思い温めていたが、誕生日というのは本来祝福であるはずだし、言葉にも鮮度があるというから、今のうちに載せておく。